PGPがアメリカ合衆国に「兵器」ではなく「単に高度な暗号化技術」として認められるより少し前、PGPの開発サポート団はNetwork Associatesに買収されました。
Network AssociatesはMcAfee(マカフィー)に代表される、インターネットに即したセキュリティ・ソフトウェア開発の超大手です。Philip Zimmermannは、PGP部門の主席研究員として招かれました。
順風満帆ともいえる変化でしたが、事態はそううまく運びませんでした。
ソースコードを撒き、フリーソフトウェアとしての確かな実績があったためか、PGPはあまり売れませんでした。暗号化技術としては突出したものを持ちながらも、商品としては二流だったのです。本人も「PGPは金にならない」とたびたびインタビューで漏らしています。
商売を根ざしたNetwork Associatesと、多くの人にPGPを使ってほしいと願うPhilip Zimmermannの方針の違いもあり、同社のPGP部門は2001年にあっさりと解体を迎えました。
PGP部門が解体され、その後再びPGPを買収したのはPhilip Zimmermannが特別顧問を務めるPGP Corporationでした。
同社は、Network Associatesが買収したPGP団体と似て非なるものです。ただし、OpenPGPという形でソースコードを公開し続けることを信条としている辺りは、Philip Zimmermannの意思を色濃く受けついでいるといえるでしょう。
そしてこのとき、PGPの名を掲げた、本当の意味での世界進出が始まったともいえます。
現在、PGPの支社はヨーロッパ各国や先進国はもちろんのこと、日本にも存在しています。利用者の主は企業各社で、銀行や政府といった高高度な情報管理が必須な場においても歓迎されています。
フリーソフトウェアとして高まった地位や信頼性を隠さずに活用していく。
この方針は、PGPはこれからも躍進させていくことでしょう。
ただ、Philip Zimmermannの生み出したPGPは本当にすんなりと躍進できるのでしょうか。彼が何事かに巻き込まれるのをなかば期待しながら、見守っていきたいところです。